コンピューター黎明期の笑い話

1)情報化により組織は劣化した?

solution_02パソコンの普及した組織で、以下のような光景を目にしないですか?
「お~い○○君」と、社長が内線で部下に連絡します。「例の報告書を見せて貰えないか?」
ところが、○○君は不在です。
「すみません、○○は外出中です。どうしましょうか」となり、社長は「そうか、なら仕方がないな」と、なります。

これが、パソコン導入以前なら、「○○は外出中ですが、私がお持ちします」と、ならなかったでしょうか?
ところが今は、「ファイルの所在は○○君しか分からない」と、誰もが諦めてしまいます。

この何気ない会話では、社長は報告書を手にできなかった訳です。
もしかしたら「今の仕組みは、パソコンの導入以前よりも劣っている可能性がある」と、言えないでしょうか?

また、こんな経験をすることがあります。
上司のパソコンが壊れ、中のファイルが消えてしまいました。本来なら一大事のはずですが、上司は頭を掻いて笑っています。
情報が電子化したといっても、情報の価値が変わった訳ではないですから、変わったのは上司の「意識」ということになります。
もし、パソコンを使用するようになって、上司の意識が変わったとすると、これも「組織の劣化」ではないでしょうか?

2)劣化の原因はパソコン?

パソコンを導入すると、組織が劣化するのでしょうか?

パソコンはアメリカで生まれ、アメリカで育ちました。
そしてパーソナルコンピューターと言われる通り、個人向けのコンピューターです。
アメリカ生まれらしく、使用者のプライバシーを守るパスワード機能など、パソコンにはアメリカの文化や習慣を反映した、個人向けの思想や機能があるといえます。

30年前に誕生したパソコンは、あらゆる組織で使われるようになりました。それまでコンピューターを使用していなかった組織に、歴史的な転換をもたらした可能性があります。

パソコンを使用すると、組織の書類はソフトで作成したファイルになります。ファイルは各々のパソコンに保存するようになります。
パソコン使用者がこれを繰り返すうちに、組織の書類はファイルとなり、次第に各々のパソコンに分散します。
こうなると、パソコンの使用者が不在の時に情報を取り出せなくなります。また、パソコンが故障すると、組織の情報の一部を失うことになります。
パソコンの持つ個人向けの「特性」も問題です。
組織のパソコンを、いつの間にかプライベートパソコンと同様に扱う風潮が生まれるからです。「他人のパソコンに触れない」ことが、あたかも運用上のルールであるかのようになります。
リスクの認識が希薄になり「ファイルの共有」は更に困難になり、「ファイル消失」の危険も高まります。

「パソコンには、組織の情報管理を劣化させる仕組みがある」と、言わざるを得ません。

3)「ネットワーク化」による問題解決

パソコンを組織で使用する際の問題点の解消には、組織内のパソコンに分散するファイルを一カ所に集めて、誰でも利用できる環境を作る必要があります。
こうすることで、各々のパソコンの故障によるファイルの消失を防ぎ、担当者が不在な時でも、必要なファイルを利用することが出来るようになるからです。
これは、一般的に「ネットワーク化」と言われる仕組みを構築することで行われます。

このネットワーク化に伴う「共有フォルダ」の運用方法を知るために、ある地方自治体を訪ねたことがあります。
「共有フォルダ」の管理方法を聞いたところ、「管理をしてない」との回答でした。そして、「誰が共有フォルダを使用しているのかも分らない」という状態でした。
そして、他の自治体や企業でヒヤリングした結果、殆どの組織で「共有フォルダ」を上手く使えていない事が分かりました。
「ネットワーク化」を施しても、前述したような社長の会話や、上司のエピソードは減らないようです。

4)「共有フォルダ」の問題点

多くの組織で「共有フォルダ」を上手く使えない原因はどこにあるのでしょう。

世の中に存在する、ファイルを「集約・共有」するためのアプリケーションは、「共有フォルダ」型のアプリケーションの一種類のみです。
私共は、このアプリケーションに原因があると考えました。
「フォルダ」型のアプリケーションはパソコンと共に生まれ、私達に馴染み深いものです。
ところが、この使いやすい仕組みが「共有フォルダ」になると一変します。

多くの人が、プライベートのパソコンでは「自分なりの整理方法」と「保存場所の記憶」を頼りにファイルを保存しています。
ところが、複数の人が使用する「共有フォルダ」では、これらの方法に頼れなくなります。「自分なりの整理方法」や「保存場所の記憶」は、他の使用者と共有ができないからです。

そのため「共有フォルダ」を、使用者が思い思いに使ってしまうと、ファイルの所在が不明になります。
この問題の解決には、ルールに基づいた運用が求められますが、多くの組織ではルールが存在しないか、存在しても守られていません。
難しいのは、例えルールを守ったとしても、初めての人やルールを知らない人には使えないことです。

万人共通で使えるルールの策定と、そのルールを守るためのマネジメントの難解さが、「共有フォルダ」の運用を難しくしていると言えます。

5)ルールではなく整理

コンピューターの世界は、より効率的な検索方法を模索していますが、ビジネス現場で一般的な「整理・整頓」の考え方が、現在のコンピューターには存在していません。
私共は、これが「パソコン運用における問題」を解決できない理由と考えています。

ここに面白い事例があります。
「図書館」では、使用者は整理のルールを知らなくても利用できることです。
「本棚」は整理方法を単純化します。整理に必要なのは「本棚」と「本」の二種類だけです。
そのため整理方法は、「何の本」を「何処の本棚」に入れる、という単純なものになります。
これにより本の整理を実務担当者の判断に任せることができます。ここには、明文化したルールも、特別なマネジメントも不要です。
それでいて「本棚」は、人や組織、地域や時代を超えた、万人共通で使える仕組みになります。

私共は、パソコンの運用にはファイルの整理・整頓が必要と考え、その手段として本棚の形をしたアプリケーションやサービスを提供するようになりました。

6)改善の進まないコンピューティング

それにしても、パソコンが誕生して30年が経過し、世界中の優秀な人たちが取り組んでいるのに、未だにコンピューターの改善が進まないのはどうしたことでしょう。

分かっているのは、「現状の組織のコンピューターの仕組みに問題がある」とは、誰も考えていないことです。
「問題がない」と考えているので、改善の対象にもならない、という事でしょうか。

では、何故気付かないかというと、そこには使用者のパソコンに対する「特別な感情」がありそうです。

パソコンが誕生した当時は、誰もがパソコンに熱狂しました。そしてパソコンを大歓迎しました。
そして次にインターネットが生まれ、スマートフォンが普及します。
パソコンに端を発したサプライズは、今も私たちを熱狂させているのかもしれません。

そのため私共は、世の中の多くのパソコン使用者が、パソコンに「特別な感情」を持つ「パソコン信者」ではないかという仮説を抱いています。パソコンのすることなら全てOK、ウェルカムという状態です。
そう考えた方が、説明の付く場合があるからです。

ファイルを消失して上司が笑ったのは、「偉大なパソコンのする事なら仕方がない」との、深層心理が働いたためであり、「組織のコンピューターの問題」を認識できないのは、「欠点が目に入らないため」という具合です。
多くの組織が成果を求めずに、毎年多額の予算をシステムに計上していることを考えると、どうしても「パソコン信者」を連想してしまうのです。

「パソコンがもたらすメリットに比べれば、少しくらいのリスクは関係ない」との、考え方もありますが、リスクを解消した方が、更に効率的なことは言うまでもありません。
もう、そろそろ「パソコンの運用における問題点」を理解されても良い頃、と考えています。

動画で伝える「パソコン運用における問題点」若林君の挑戦

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